雁風呂(エッセイ奥野みち著)

ちょっとお休みタイム

 

5月16日  みちのくのお客様の奥野みちさんがエッセイを送ってくれました。

人と野鳥との自然の中での優しい関わり合いがホッコリ心を温めてくれました。

是非、ご拝読下さい。

 

奥野みちさん一言コメントお願いします♪

 

 

 

 

 

  雁風呂                           

 「月の夜、雁は木の枝を口にくわえて北国から渡ってくる。飛び疲れると波間に枝を浮かべ、その上に止まって羽を休めるという。そうやって津軽の浜までたどりつくと、いらなくなった枝を浜辺に落として、さらに南の空へと飛んでいく。日本で冬を過ごした雁は、早春の頃再び津軽へ戻ってきて、自分の枝を拾って北国へ去ってゆく。あとには、生きて帰れなかった雁の数だけ枝が残る。浜の人たちは、その枝を集めて風呂を焚き不運な雁たちの供養をしたのだという。」

 1974年『サントリー 角瓶』のコマーシャルでナレーションされたものである。

 実際には、雁は渡るときに枝をくわえないし枝にのらなくても自分で浮いていられる。

 隊列を組んで鳴きながら渡ってきて、また去っていく雁の姿に、人は移り変わる季節に時の過ぎるのを重ね合わせ親しみを感じたのでしょう。また雁の旅の苦難を案じる優しい気持ちに生まれた伝説なのでしょう。

 

 雁の越冬地には、宮城県伊豆沼や新潟県福島潟、南限といわれている琵琶湖などが知られているが、茨城県稲敷市稲波干拓地には雁の仲間オオヒシクイが毎年越冬にやってくる。

 2002年には50羽近くまで減ったが、ここ数年は120羽を優に超えている。

越冬期間は11月初旬から3月の初旬、観察小屋ではその約4か月間を3人の男たちが手弁当で休日もなく通っている(朝7時~日没まで)。

昨年は113日に8羽が初飛来し、11日には26羽に増えた。その後、次々に飛来し132羽になった。家族単位または数家族で飛来してくるようだ。

今年224日に132羽全数ののオオヒシクイが北帰した。

稲波干拓地は小野川の曲線に沿って開けた250ヘクターを有する田園地帯で、オオヒシクイは田圃の二番穂を食べる。

観察小屋ではオオヒシクイ塒住所(A1~10地区、E地区等)なるもので区分けして、移動やまた音(車や飛行機、ヘリ)に対する反応や諸々を逐一記録に残している。

3人の男たちはオオヒシクイが飛来する4か月を中心に残りの期間はそれぞれサイクリングや車で探鳥の旅をしたり、70歳を過ぎた年長の一人はクラシック曲を流すここちよい空間の喫茶店(週2日のみ)をやっている。

すでに肩書きを脱いだ彼らだが、お互いの体調を気遣いながら4ヶ月間は、現役のごとく嬉嬉として同志の顏となっている。

そして早春オオヒシクイが北帰するのを見届けたあと「またオオヒシクイが来るころに」と再会を誓いあうのだ。

 

            奥野みち 著

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                      

 

   雁風呂(エッセイ奥野みち著)” に対して4件のコメントがあります。

  1. ゆうしん より:

    隊長、本日チゴハヤブサの声を今年初めて聞くことが出来ました。昨年は姿を見れませんでしたので嬉しい限りです。引き続きリサーチして報告させて頂きます!

  2. みち より:

    先日はありがとうございました。
    初対面の方ばかりなのに仲良くしていただいて楽しい探鳥ができました。
    裏磐梯の鳥たちのおかげ、いえいえ愛鳥心溢れるみちのくの旦那の仲立ちと御もてなしがあってこそ!
    また、拙いエッセイと画像を掲載ありがとうございました。
    最初の画像で2列目に飛んでいる小さいのはマガンです。なぜかオオヒシクイの群の中に(シーズン中ずっと)紛れてました。
    皆様にお会いできる日を楽しみにしています。

  3. みちのくの旦那 より:

    ゆうしん
    チゴハヤブサありがと。楽しかったね。皆からも宜しくとの事でした。

  4. みちのくの旦那 より:

    みちさま
    先日もありがとうございました。みちのくの鳥仲間との探鳥面白かったでしょう。またご一緒しましょうとの事でした。雁風呂興味深く読ませて頂きました。

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